君と描く花言葉。
「セイジって、描けないものとかあるの?」
「うん?」
ふと気になって、聞いてみる。
「セイジに描けないものなんてなさそうだなって」
「あるよ」
私が冗談交じりにそういうと、セイジは意外にも真面目に返してきた。
そりゃあ、難しいものなんて世界にはいくらでもありそうだけど。
それでもセイジならサラっと描いてしまいそうな感じがするよ。
「例えば?」
「虫……とか。すぐ目をそらしちゃうから、描けない」
「虫苦手なんだ?」
「うん。ニョロニョロしてるやつとか、ウゴウゴしてるやつとか、直視できなくて」
「あはは。ちょっと意外かも」
「そう?花の世話してる時とか、たまに虫がついてたりするから大変なんだけど」
「花には寄ってくるよねぇ……」
いくら室内とはいえ、隙間から入ってくるやつはいるし。
アトリエもずっと閉め切ってるわけにはいかないから、夏とかは大変かもなぁ。
「……あと、花も」
「花?いつも描いてるのに?」
「……ううん。一種類だけね。描けないのがあって」
「ふぅん……難しいの?」
「うん。とても」
どんな花なんだろ?
変な構造してるやつとか……あ、模様が複雑だったりするのかな。
セイジにとっての『難しい』は、私にとってどの程度なのだろう。
ちょっと想像がつかない。