君と描く花言葉。




「ふふ、ごめんなさいねえ。
可愛い女の子が来てくれたのが嬉しくって、つい」


「いえ!……そうですね、好きな花、と言われてパッとは出てこないんですけど……お花を描くのが好きで」


「へえ、絵を描くのね!いいわねえ。
私も祥太郎さんも絵はからっきしだから」


「おいおい。別に描けないわけじゃあないぞ」


「あらそう?こないだお店のチラシが描けないって困っていたのは誰だったかしら」


「……はは。参ったな」


「チラシですか?」


「ええ。今、あそこに飾ってあるもののことよ。
本当はね、お花の写真の周りに可愛い絵が描きたかったのだけれど。2人とも描けなかったから、地味になっちゃったのよねえ」



月森さんが指した方向を見ると、白い紙に花の写真が印刷されたチラシが壁に貼ってあった。


たしかに、余白が目立って少し地味になってしまっている。




「育て方のコツ……ですか」


「やっぱり、お花を育てるのは難しいんじゃないか〜って躊躇しちゃう方が多いみたいなのよねえ。
だから、簡単に育てられるものを紹介したりしているの。
少しでも興味を持ってくれたらいいなあって。
可愛くできたら、子供たちにも喜んでもらえるかと思ったのだけれど」



うまくはいかないものね、と月森さんが頬に手を当てる。



そうだなあ……。


簡単に枠で囲ったり、デフォルメしたお花や動物を描いたら可愛くなるかも。


セイジのアトリエや温室の窓に描いてあった、あんな感じのやつ。



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