この空を羽ばたく鳥のように。




 竹子さまと離れて道場の端に寄り、流れた汗を拭いていると声をかけてくる人がいた。



 「さよりさんはすごいですのね!わたくし、今度こそ姉上から一本取ると思いましたわ!」



 そう言って明るく笑いかけてくるのは、竹子さまの妹の優子さん。

 妹だから、なるほど竹子さまに引けを取らない美しさだが、彼女には竹子さまにはない(ほが)らかさがあった。
 いつも鋭利な刃のような鋭い気迫を持つ竹子さまとは違い、優子さんは物腰も柔らかく、人懐こい。
 何にでも興味津々な瞳で顔を覗き込まれ、私は苦笑した。



 「けれどもやはり竹子さまは、なかなか一本取らせてくれませんわ。私など、とても手が届きません」

 「あら、でも姉上はさよりさんとのお手合わせのとき、いつも生き生きとしてらっしゃるわ。
 きっとあなたの上達ぶりを、姉上も楽しみにしておられるのよ」



 優子さんは朗らかに笑う。
 素直に私の腕前を賞賛してくれる。



 「それがまことなら、光栄です」



 喜代美と同い年の彼女を見つめて、羨ましいと思う。
 私もこれだけ素直な娘だったなら、と。

 でも反対に苦手だな、とも思う。

 ひねくれている私は、素直な優子さんと一緒にいるより、辛辣な竹子さまといることのほうが好きだった。

 何より彼女の言動には、刺激を受けるものがあったからだ。










 ※辛辣(しんらつ)……きわめて手きびしいこと。


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