この空を羽ばたく鳥のように。
おさきちゃんもまったく同じ顔の渋っ面を作って、むっとした声をあげる。
「なんで仲良くできないのよ」
「組が違う。他の組の奴とは仲良くできない」
弟君はきっぱりと答えた。
先にもいったように、会津城下の士分の子弟は地域別に《辺》という組に区分されている。
彼は花畑辺。米代辺とは郭を隔てたおとなりさん。
違う組同士は、なぜか知らないがよく争う。
そのためか、違う組の者と親しくすることはほとんどない。
暗黙で禁じられてるようなものだ。
それを破ると、時には什長から制裁を受ける対象となってしまうこともあるのだという。
男社会はいろいろと複雑なのだ。
「でもあんた、おゆきちゃんの兄君とは組が違くても仲良いじゃない」
「!……あれは!!」
おさきちゃんが指摘すると、なぜか彼の顔は真っ赤になる。
「ん?あれは何?理由があるなら申してごら~ん?」
おさきちゃんが意地悪そうにニヤニヤしながら、次の言葉を促して弟君の顔を覗きこむ。
「……っ!! 背の高い奴は苦手なんだよっ!!」
彼は真っ赤になって怒鳴ったあと、「出かけてきます!!」と、脱兎のごとく駆けていった。
「ねえ!? 見たでしょう!? あの子ったら、自分が小さいのを気にして、背の高い子が嫌いなのよ!まったく子供よねえ!?」
おさきちゃんは弟君の反応を面白がってケタケタ笑う。
う~む。これが彼女流の弟の可愛がり方なのかな?
「……男子って、いろいろと面倒ねえ」
ため息がでた。
まあ、友人は自分で探し求めるもの。
婚姻のように、目上の者からあてがわれるものではないからなあ。
※目上……自分より地位・階級や年齢が上であること。また、その人。
※あてがう……上位者が下位者に適当に見つくろって与える。
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