この空を羽ばたく鳥のように。




 他にいい案がないかなと思案する私に、ふふっと笑っておさきちゃんは言う。



 「なんだかんだ言っても、一緒に暮らすと情がわいてくるもんなのねえ。

 あれだけ “父上に裏切られた!” なんて(なげ)いていたおさよちゃんが、弟君のためにそんなに一生懸命になるなんて」



 言われて、つい顔が熱くなる。



 「ちっ!違うわよ!! これは……!……そう!喜代美を追い出し(やす)くするための布石なのよ!」

 「へえ?そうなの?」



 おさきちゃんは先ほど弟君をからかった時のニヤニヤ顔を、今度は私に向けてくる。



 「そうよ……そう!」



 見透かされてると分かっていても、私は強がった。


 別に……別に喜代美のことを心配してる訳じゃないんだから!



 けど―――思い返してみれば。

 喜代美は一度も、ひと言も「寂しい」なんて言ってない。


 それなのに。


 なぜ私は「寂しいんだ」と感じたのだろう。
 なぜ彼の寂しさを埋めてやろうとしたのだろう。


 それを(ほどこ)してやることで、今まで味わった敗北感を払拭したかった?

 自分のほうが上だと優越感に浸りたかった?

 それとも喜代美が己の寂しさを自覚して、養子をやめる運びになることを期待した?



 「………?」



 わからない。

 なんだか、自分の気持ちがわからない。










 ※布石(ふせき)……将来のために前もってととのえておく手はず。


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