雪の光
しばらくしてから私は霊安室に向かった。
何も考えられないなんてことはなかった。
頭がいつもより何倍も回転していた。
看護師さんに支えられることもなく、私は歩けていた。
でも、死んだことはまだ実感が湧かない。
ただ機械が止まっただけで彗はまだ生きている気がしていた。
「お入りください」
ありがとうございます、と言って中に入る。
看護師さんは少し驚いていた。
あまりに冷静だったからかもしれない。
部屋の中は涼しかった。
きっと死体の腐敗を遅らせるためなのだと思う。
嗅いだことのない変な臭いがする。
彗を担当していた医師が立っている。
きっとあれが、彗。
「……確認をお願いします」
静かに白い布を取る。
その顔は、少しやつれて生気が感じられないけれど、彗だった。
「……そうです、雪宮彗です」
言った瞬間、涙が零れた。
「……彗、頑張ったね……」
手を握ると、さっきまでの温かさは消え、少し硬くなっていた。
何より冷たい。