雪の光
そのあとはしばらく書かれていなかった。
ただ、ペンを下ろしたような跡ばかりが見て取れる。
白紙のメモばかりが続く。
捲っていくと、ようやく文章が見えた。
『12月2日
死にかけの顔のやつがいた。
よく見たら、俺が昔好きだった音を出していたやつ。
名前は忘れた。』
次のメモを見ると、『あの日』だった。
『12月15日
線路に飛び降りそうなやつがいた。
反射的に助けていた。
死ぬところを見ようとしていたのに。
やっぱりあいつだ。月岡だ。』
驚いた。
彗はずっと前から私を知っていた。
『音』を持っていた時から。
『12月16日
茜に告白された。
大事だけれど、好きとか嫌いとかは分からない。
だから断った。
泣かせたことで心臓の奥が痛んだ。』
『12月18日
月岡侑里。
名前を思い出した。
今日はたまたま会った。』
『12月19日
骨を見た。
たぶん人の腕。
その腕の持ち主は生きているのか。』
『12月20日
冬休みになった。
今年は勉強だ。
志望校も決める時期。』