雪の光
「いいよ、もう受かったし」
「お父さんがね、入学金支払ってくれたのよ。
侑里がせっかく大学に合格したんだから、通わせるのが親の役目。
学費なんて気にしなくていいのよ。
めいっぱい、好きなことを勉強しなさい」
驚いてお母さんを見つめる。
いつの間にか払われていた学費。
初めての親らしい振る舞いに言葉が出ない。
「……分かった」
代わりに、大きく頷いた。
「あとで写真、撮ろう。校門のところで」
「何年ぶりかしら、楽しみね」
やっと家族らしいことをしている実感が湧いてきた。
もう少し1人で歩きたくてお母さんと別れて今度は実習棟を歩く。
一年しかこの棟は使うことがなかったけれど、それでも印象深いことが多い。
一度だけ、千夏と会った。
あの後から元通りにはならず、私は瞬達と過ごして受験勉強をしてきた。
高校三年生になって私と千夏はクラスが離れ、たまたま千夏が私のいる教室に来た時に目が合っただけだった。