雪の光


小走りで行くと、お母さんはもう校門の前で待っていた。


「ごめん、遅くなって」


まだぎこちない。


3年の壁は、思ったよりも大きかった。


「いいのよ、さ、撮りましょ。

侑里の写真」


もう撮影の準備は整っていて、あとは私が入るだけだった。


『卒業式』と書かれた看板の横に立って、シャッター音を待つ。


携帯のいかにも作り物といったようなシャッター音で、私の高校生活は、本当に終わった。


上を見ると、桜が綺麗だった。


実習棟から見た時も良かったけれど、こっちもいいなあ。


「帰ろうか」


「そうだね」


並んで歩くのは、小学生以来だ。


距離のとり方が分からなくて少し離れた所から歩く。


「良かったね、合格できて」


「うん」


「何か食べて帰ろうか」


……思いついた。


これがだめなら、もう二度と会えないかもしれないけれど。


「……侑里?」


< 145 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop