雪の光
「ごめん、お母さん。
お昼一緒に食べられない。
私、行かなきゃいけないところがある」
一瞬驚いていたけれど、すぐにいつもの表情に戻っていた。
「お昼はいつでも食べられるしね。
行ってきなさい」
「ありがとう」
急いで家の方向に走りながら思った。
お母さんって凄い。
深く聞かなくても何となく状況を理解出来るから。
私の今までの態度は大人を相当舐め腐っていた。
ごめんなさい、お母さん。
電車を降りてからも走り続けて家に着くと、鍵を取り出すのがもどかしかった。
はやる手を落ち着けて鍵を開け、自分の部屋を漁る。
探しながら記憶が蘇る。
『……また、あの、……音が聞き、たい……』
『あの音のやつだ。』
死んでしまったのだから、もう出来ないと思っていたけれど違う。
もしかしたら、茜ちゃんは、私は、それを望んでいたのかもしれない。