雪の光
「……あった」
ようやく見つけた。
次はケースを部屋の隅から持ってくる。
だいぶ埃を被っている。
開けると、懐かしい木の香りが漂った。
……ヴァイオリンだ。
当たり前の事実に胸が震える。
調弦してから楽譜を立てる。
曲自体はそんなに長くはないし、難しくない。
小学校低学年で弾いていた曲だから。
でも、気持ちは難しい。
弾いてみると、何年も弾いていないということは大きかった。
もっと気持ちを込めて。
あの時の、私の気持ちは?
あの時、私は何を感じていた?
作曲者は、どんなイメージを求めていた?
曲作りは、どんな背景で?
夢中になって弾き続けた。
楽しかった。
ああ私、この感じが大好きだったんだ。
時計を見ると、もう夜になっていた。
疲れたのに、心地よい疲れで全然嫌じゃない。
イメージに近づけられたところで練習は終わらせた。