雪の光
次の日、茜ちゃんの家に向かった。
昨日の高揚した気持ちもまだ残っているけれど、後悔も混じっている。
あの時、私はただどうして彗が私のことを知っていて、それでもって覚えていたのかということしか気にしていなかった。
でも、彗はそんなことを伝えたいんじゃない。
たぶん、彗が自分で覚えていたいんだと思う。
たとえ死んでしまったとしても。
インターホンを鳴らす。
今どきありがちな訪問者の顔がわかるタイプではないらしく、そのまま出てきた。
「……は?……来るなって言ったでしょ」
本気で怒っている。
でも、その中には悲しみやつらさが含まれているように感じた。
「……分かった」
「何が?ていうか、帰ってよ」
「彗が求めていたのはこれ」
賭けが始まる。
「何これ」
「ヴァイオリン」
そう言った時の茜ちゃんの顔は絶対忘れない気がする。
なんで知ってるの、と驚き、呆然とし、気持ちを忘れていた。