雪の光


「侑里、今日は帰るの?」


帰りの準備をしていると声をかけられた。


「うん」


「でもみんな準備しているじゃん、いいの?」


「いいの」


早く帰りたい。


気付かれる前に帰りたかったのに。


「……何かあった……?」


「何もないよ。

私が行きたくないから行かないだけ。

それ以上に理由、ない」


鋭い千夏はそれで追及の手は緩めなかった。


きっと何があったか想像がついているのだ。


「……喧嘩でもした?」


「さっきも言ったように、ただ行きたくないから行かないだけ」


「じゃあ行きたくないってことにも理由はあるじゃん!」


「行きたくないから行きたくないの」


「何かあったんでしょ!」


「私の部活に行かない理由を知ってどうするの?

そんなに私に構ってどうするの?」


「心配だからに決まってるでしょう!」


「それじゃあ千夏が疲れちゃうじゃん」


「それでも心配なの!」


< 57 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop