雪の光
彗に電話をしようかと思ったけれど、やめた。
こんな状態で電話をしてもメンヘラみたいに思われるし、構ってほしいように思われてならなかった。
広げた教科書を見ながら勉強をする。
それが今の私を落ち着かせる最良の方法だと思った。
……それなのに。
どうして帰ってくるの。
「たっだいまあー」
絶対酔っている。
夜になる前から飲んでいるなんて、仕事はどうしたの。
「侑里ちゃーん、ろしたのー?」
少し不機嫌になっている。
「おかえり」
それだけ言ってまた勉強に戻る。
私はもう自分で大学に行くと決めたんだから勉強をする。
お母さんに構っている場合じゃない。
バタン、と勢いよく部屋のドアが開いた。
「へへっ」
心拍数が一気に上昇する。
「何……?」
「おかーさんさあ、不倫しちゃったあ」
赤ら顔でヘラヘラ笑っているあたり、相当むかついた。
酔った勢いで馬鹿だなって思う。
「……そう」