雪の光
「ああっ!もしかして、怒ってるう?
珍しー!」
その時、私は近くにあったカッターナイフを咄嗟に掴んでお母さんを壁に押し付けていた。
「きゃあ!何!」
「私がやめてって言っているの、聞こえなかったの?
何回も言ったよね、やめてって。
昼間から酒飲んで不倫するとか何してんの?
……あんたなんか親じゃない」
そう言ってお母さんの目を見ると、いつの間にか私はお母さんの背丈を超えていたことに初めて気付いた。
「ちょ、ちょっとお、冗談に決まってんじゃないの」
「……あんなにヘラヘラして冗談言って、今なんて顔、引きつってるよ?」
「カ、カッター、しまってよ」
「……私、このまま殺して殺人犯になっても構わないんだけど」
そこでこれは普通じゃないと気付いたらしく、私を必死でどかそうとした。
「何すんのよ、親に向かって!」
「言ったでしょ。
親じゃないって。
結婚していてまた男と付き合うなんて、私の気持ちは少しも考えていないことがよく分かったよ」