雪の光
「お、お母さんのこと殺したら、あんたここに住めないんだよ!」
「別にいいよってさっきも言ったでしょ」
カッターの面を目の前にいる人の胸に当てる。
ヒッと息を呑んでいる。
「……やめて……」
カチカチと刃をしまった。
その瞬間、その人は床にへたり込んだ。
それを見ても、可哀想だともざまあみろとも嬉しいとも思わなかった。
「……良かったね、死ななくて」
それだけ言って家を出た。
ドアが閉まると、もたれかかった。
空を見上げると、ああそうか、と思い直した。
誰かを殺すんじゃなくて、自分を殺せば良かったんだ。
そうすれば、あんなに怒ることもなかった。
私、どれだけ頭に血が昇っていたの。
あーあ、みっともなかったな。
すぐにでも死にたかったけれど、久しぶりにたくさん喋った1日だったから疲れた。
寝たい。
家のドアを開けて、自分の部屋に戻った。