雪の光




「ねえ、数学の宿題やった?」


「うん、やったよ」


「あたしさ、忘れちゃったから見せて?」


上目遣いで萌え袖って。


……これで何回目の忘れただよ。


「ごめん、隣のクラスの子に貸しちゃった」


咄嗟に嘘をついた。


「そっかー、分かった!」


この前家の中で盛大にキレてから短気になった気がする。


千夏にはさらに苛立つようになった。


たぶん私は舐められていると思う。


ちょっと可愛くおねだりすれば宿題のひとつくらい見せてもらえるって思っている。


最初のうちは見せていたけれど、だんだんそれが当たり前っていう空気が嫌になった。


見せない私がケチなのか、自分でやろうとしない千夏がいけないのかよく分からない。


気分転換に窓を開けると、冷気が教室に流れ込んだ。


「うわっ!冷てえ!」


「寒い!」


「頭が冴えるぞ!」


「お前なんかすぐ寝るくせに」


教室中が蜂の巣をつついたように騒がしくなった。


その時、先生が入ってきた。


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