雪の光


その後も人が続々と来て、練習が始まったけれど、私は何も話さなかった。


ここでは声出しくらいしかまともに声を出す機会はない。


たまに無駄話をしていて注意される後輩を見ていると、話し相手がいなくて良かったと思う。


前衛のボレー練習のボールを出しながら救われる。


最後の練習がようやく終わると、引退にまた一つ近づいたと考えるようになった。


……最初は楽しかったのに。


そうでもしないとやっていける自信が無い。


辞めたいなんて、誰にも言えない。


誰にも頼れない。


帰る時も、誰も追いつかないようなスピードでとっとと帰る。


理由は簡単。


笑われたくないから。


プライドだけは高いところも、私は嫌いだ。


嫌な自分を振り払うかのように、走る。


改札で定期を機械に叩きつけるようにして入る。


どうしてこんなに気が立っているんだろう。


自分で自分を抑えられない。


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