雪の光
「じゃあ私、こっちだから」
「うん、じゃあ」
特に手を振ったりすることもなく別れる。
普通、男女で帰れば恋心でも生まれるものかもしれないけれど、私はそういう感情は持ち合わせていないから何もない。
彗は好きとか言ってくれたけれど、あれは普通の好きではないと思う。
何か、私の暗い部分でも気に入ったのだろう。
それか、恋をしている自分に酔ったのかもしれない。
もしも後者なら、今すぐ彗の目を覚ましてやりたい。
「……ただいま」
あれ以来、家の中ではほとんど話していない。
お父さんは仕事でまたどこかに行っている。
お母さんは1日中仕事をしている。
家の中にいても自分の部屋に閉じこもっている。
今日も何も食べたくなくて、着替えて机に向かった。
何日もあまり食べていないからか、あまり元気に動けない。
……受験生なんだ。私は今、やることがあるんだ。
現実から逃げるように国語の問題集に没頭する。