雪の光
「月岡さん、帰らないの?」
「うん、まあ」
「珍しいね、いつもはすぐ帰っちゃうのに」
「春川くんは、いつもこれくらいなの?」
「いつもは部活だからもっと遅いよ」
「何部なの?」
「剣道部」
ふうん、と相槌を打つと、改まった口調で言われた。
「あのさ、なんて呼んだらいい?」
「え?」
「名前。いつまでも苗字呼びって堅苦しくない?」
「言われてみればそうかも……」
「侑里、でいい?」
「うん、いいよ」
名前を呼ばれただけなのに、なぜか心臓が跳ねた。
「ええと、瞬、くん?」
「なにそれ、俺は呼び捨てなのに?」
そうか、そういうことか。
春川くんは私に呼び捨てで呼んで欲しかったのか。
「瞬」
「うわ、嬉しい。
よろしく、侑里」
ほら、また。
今度は速く脈が流れ出した。
熱でもあるのかな。
おでこに手を当てると、熱がある感じはしない。