月は紅、空は紫
「えっ!? うわっ! 痛ッッ!!――」
膝より先が無くなった自分の右足を見て、仁左衛門はまともな言葉を失う。
しかし、頭の片隅で微かながらに――自分に起こった事を悟った。
仁左衛門は、転んだから脚に怪我を負ったわけではない、怪我を負わされたから――片足を失ってしまったから転んだのだ。
(な、何が起こったんだ?)
自分の脚が無くなっていて、それが理由で自分は転んでしまい、身体には耐え難い激痛が走っている、そこまでは理解できる。
だが、その状況が起きた原因が何なのか、いつそうなったのか、仁左衛門にそれを知覚する術は無かった。
痛みの中、僅かに残された理性を振り絞り、周囲に何か異常が無いか確認する為に首を左右に振って見回してみるが、暗い闇の中で仁左衛門の眼に映るものは何も無い。
暗闇が仁左衛門の中にある恐怖を増幅していくだけである。
痛みと、恐れにおののく仁左衛門の傍らで、地面に落ちている木の葉が旋風に巻き上げられ空中に渦を形作っていた――。
膝より先が無くなった自分の右足を見て、仁左衛門はまともな言葉を失う。
しかし、頭の片隅で微かながらに――自分に起こった事を悟った。
仁左衛門は、転んだから脚に怪我を負ったわけではない、怪我を負わされたから――片足を失ってしまったから転んだのだ。
(な、何が起こったんだ?)
自分の脚が無くなっていて、それが理由で自分は転んでしまい、身体には耐え難い激痛が走っている、そこまでは理解できる。
だが、その状況が起きた原因が何なのか、いつそうなったのか、仁左衛門にそれを知覚する術は無かった。
痛みの中、僅かに残された理性を振り絞り、周囲に何か異常が無いか確認する為に首を左右に振って見回してみるが、暗い闇の中で仁左衛門の眼に映るものは何も無い。
暗闇が仁左衛門の中にある恐怖を増幅していくだけである。
痛みと、恐れにおののく仁左衛門の傍らで、地面に落ちている木の葉が旋風に巻き上げられ空中に渦を形作っていた――。