水月夜

☆☆☆

あっという間に放課後になった。


小さくため息をつきながら、カバンに持ってきたものすべてを入れる。


自分の吐いたため息がザワザワした空気に包まれ、誰にも聞こえることなく消えたタイミングで直美のほうを見た。


昨日空き教室でクラス全員の悪口を言っていたから教室で悪口を言うのかと思ったが、的はずれだった。


午後の授業がはじまる前の休み時間はヒロエと紀子と楽しそうに話していたし、5限と6限の授業中には席が近いヒロエと話していたし。


昨日はクラス全員の悪口を言っているのを聞かされ、今日同じグループのメンバーと仲よく話しているところを見たら、どういう対応をとればいいかわからない。


もう、直美がどういう人間なのかもわからない。


今、直美は無愛想な顔でカバンを肩にかけ、スマホをいじっている。


無愛想な直美に声をかけていいのかな。


いや、やめておいたほうがいいかもしれない。


人前だ人前じゃない関係なく、『空気が読めないやつ』だと言われるのは嫌だ。
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