水月夜

☆☆☆

学校に登校してきてから数時間後の昼休み。


購買で買ってきたメロンパンを屋上で食べようと教室を出たとき、うしろから声をかけられた。


「梨沙、ちょっと話があるんだけど」


くるっと振り返ったと同時に視界に映ったのは直美だった。


近くにヒロエと紀子はおらず、ひとりで私のところに来たらしい。


取りまき的存在のヒロエと紀子を連れてこなかったのは、なにか理由があるからだろうか。


そう考えている私をスルーして、直美は私の手首を強引に引っ張って歩きはじめた。


私が直美に連れだされることに、教室にいるクラスメイトたちはたいして驚かなかった。


私と直美が同じグループなのを知っているなら驚かないのは当然だと思った。


と同時に、教室にいるクラスメイトたちの中に頬杖をついている雨宮くんを見つけた。


でも、雨宮くんは私に近づいてくる素振りを見せない。


強引に引っ張っている直美から助けてくれないのかな。


目がうるんで泣きそうになる。
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