水月夜
☆☆☆
あっという間に放課後になった。
クラスメイトたちが帰る準備をしたり部活に行く準備をするなか、直美は自分の席から動こうとしなかった。
直美の姿を見てるのは私とヒロエと紀子の3人で、私たち以外に直美に目を向けているクラスメイトは誰もいない。
直美と席が近いヒロエはバレないようにじっと細い目で直美を睨んでおり、紀子はドアの近くに立ちながら直美を見ている。
私たち3人が見ているとも知らず、直美はカバンを肩にかけてスマホを取りだした。
もしかしたら教室を出ても気づかれないかもしれない。
そう思い、教室の外に出ようとドアに向かったそのとき、グッとカバンを強く掴まれた。
「梨沙、ちょっといい?」
誰の声かすぐにわかった。
おそるおそる振り返った直後、びくっと体を震わせた。
だって、うしろにいたのがニコッと笑っている直美だったから。
気づかないかもしれないという安心感が失われ、背中から一気に冷や汗が流れてきた。