水月夜
紀子の言葉に直美が驚かないわけがない。


直美のクラス全員に対する悪口をヒロエと紀子は直接聞いていないから。


「なんで……」


そこまで言ったところで直美は口をつぐんだ。


なぜ自分がクラス全員の悪口を言ったことがバレたんだと口にすれば、さらにクラス内の評判が悪くなると考えたのだろう。


でも、私はあえて口には出さなかった。


私が言わない代わりに、ヒロエが直美にささやいた。


「私たちがそんなこと知らないとでも思った? でも聞いたんだよね。あんたが隣の空き教室でクラス全員の悪口を言ってたって」


ヒロエの言葉に口を動かすものの、なかなか言い返そうとしない直美。


いまだに驚きが隠しきれないようだ。


驚く直美になにもすることができず、目をそらしてしまう。
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