ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「初めまして、柴坂颯馬と申します。小春の、相原小春さんのお父様でしょうか?」

 そう告げると、男性はなにかを察したように一瞬大きく目を見張った。

「颯馬。あなたが……」

 小春の父が、ぽつりとつぶやく。

「この度は、お父様にご挨拶もなく、申し訳ございませんでした。先日、小春さんと入籍させていただきました」

 俺は思い切り頭を下げた。

「柴坂さん」

 穏やかな声が降ってきて、俺は恐る恐る顔を上げる。

「狭い店ですが、どうぞ入ってください」

 小春の父は優しく目尻を垂らしながら扉を開けた。いささか戸惑いつつも、俺は先に中へ進む背中を追いかける。
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