ニセモノ夫婦～契約結婚ですが旦那様から甘く求められています～

「馬鹿な父を持ったばかりに、あの子にはたくさん苦労を掛けました」

「小春さんは、お父様と一緒だったからどんなことも乗り越えられたと言っていました」

　それを聞いた小春の父は、強く唇を噛みしめた。

「そうですか……。あの子は昔から、優しくて、愛情深くて、少しお人好しなところもありますが、とても良い子なんです。ワガママもろくに言わなかった。親としては心配になるくらい真っ直ぐな子で……」

　耐えきれずふっと笑みをこぼした俺に、小春の父がきょとんと目を瞬かせる。俺は慌てて「すみません」と謝罪するが、表情は緩んだままだった。

「僕が小春さんから聞いていたお父様の特徴と、あまりにもよく似ていたので」

　俺の言葉に、小春の父は小さく驚きの声を上げる。