ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
 私、本当にこの人と結婚したんだよね。

 隣にいる颯馬さんを見据えた。視線がぶつかると、彼は「んっ?」と小首を傾げてこちらを見つめる。

 鼓動が仕事を早めた。見つめ合っているとなにかを見透かされそうで、私は勢いよく顔を背ける。

「とっても素敵なお父様とお母様ですね」

 唐突に話し出した私に、颯馬さんはふっと笑みをこぼした。

「小春のことをずいぶん気に入ったらしい。ふたりも楽しそうだった」

 言い終えた彼はカップに口をつける。熱かったのか、その顔は一瞬わずかにゆがめられた。

 私は、ホテルでのことを思い返す。

 颯馬さんのお父さんとお母さん、本当に喜んでいたな。これが愛のない結婚だと知ったら、どんなに悲しむだろう。

 思わず沈んだ顔つきになる。どうにか気持ちを切り替えたくて、私も淹れてもらったコーヒーをひと口飲んだ。

 温かさにほっとして、身体の力が抜けていく。同時に心まで緩んでしまい、私は必死に抑えていた感情が溢れ出ないように強く唇を噛んだ。
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