ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
 * * *

 ――数日後。

 フロアワイパーを掛けながら夕食の献立を考えていると、テーブルの上に置いていたスマートフォンが振動して音を立てた。

 電話だ。

 慌てて駆け寄ると、画面には一時間ほど前に見送った颯馬さんの名前が表示されている。

 颯馬さん? いったいどうしたのだろう。

 私は軽く咳払いをしてから電話に出た。

「もしもし」

『小春? すまない。必要な書類を忘れて。西留に取りに行かせるから、来たら渡してほしいんだ』

 颯馬さんは歩きながら話しているのか、声色は穏やかだったけれど、電話の向こうからはテンポの速い足音のような音が聞こえてきた。

 忙しそう。

「わかりました。どこにありますか?」

『俺の部屋の机の上に。封筒に入ってるから、それごと預けてほしい』

 私は颯馬さんの部屋に移動し、言われた場所にあったそれらしい封筒を手に取る。
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