蛍火
世話焼きなのはそのせいでもあるのかもしれない。分かるからこそ、ほっとけないというのだろうか。

「俺は、ぼんやりとしてて、笑うと少し幼くて、けっこう甘いのが好きで、ちょっと抜けてるとこがあるのがましろだって知ってるだけで…充分だったんだよ」

「!」

ましろが息を呑んだ音が聞こえたけど、優夜はそちらを見なかった。蛍が飛んでいるその光景を目に焼き付けるように、ひたすら目の前を見据えていた。

「………」

優夜は、ましろがまだ何か言うかもしれないと思って待っていた。
言わないなら言わないでいいし、どちらでも良かった。彼女には彼女のペースがある。急かすつもりなどまったくもってなかった。そう思っていたから、彼女の顔を見るつもりなどなかったのに。
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