蛍火
「や、だ」
「…ましろ?」
「だって、違うんだもん、具合がわるいんじゃ、なくて…」
何がだめなんだ、と聞こうとして。
「…その、あんまり、優しくしすぎないで」
ふいと顔を背けた彼女の、その頬どころか耳まで真っ赤なことに気がついて。
「…は、」
今度は、優夜が息を詰める番だった。
そっと尋ねる。俺のこと、好きなの?
ましろはぱっと顔を優夜に向けると、また顔を逸らしながら控えめな声でうん、と言った。寝れないのは君のせいだよ、と付け足して。
寝不足の原因が自分だと知ったとき、心臓を鷲摑みにされたように苦しかった。あぁ、あぁ、こんなことってあるだろうか。こんな、奇跡のようなことが。
嘘だろ、と思った。が、顔を真っ赤にしたましろが目の前にいるのがその証明で。