三十路令嬢は年下係長に惑う
「おはようございまーっす」

 晴れ晴れとした顔で神保がやってきた。彼女も制服は着ていない。制服着用について明確なガイドラインがあっただろうか、と、後で内規に目を通すことにして、ひとまず水都子は自分がしなくてはならない仕事に没頭する事にした。

「おはよう、神保さん」

「おはようございます!」

 水都子の隣についた神保は昨日とはうってかわって晴れやかな顔をしている。

「やー、よく寝ました、頭もスッキリ、人間ちゃんと寝ないとダメですね、やっぱり」

 晴れ晴れとしているのは、睡眠をたっぷりとったせいらしい。よく見ると顔色もよく、目は生き生きしていた。

 神保に、昨日イントラで確認した情報のいくつかでわからなかった事を尋ねていると、間藤達も出社してきた。男性陣は比較的時間ギリギリ。派遣の鶴見は週に三日で、今日は出社しない日という事らしい。

 朝礼が終わったら一旦全員でミーティングをすると間藤が言い、それまでの時間、水都子はこれまでの議事録やメールにざっと目を通した。

 他にも、部署のスケジュールも閲覧できるようになっており、全員の一週間の動きが見えるようになっていた。見ると、全員が社内にいる日というのはあまりなく、誰かしらが出張に出たり、夜間シフトに入るようになっている。

「けっこうハードな感じだね」

 と、水都子が言うと、神保曰く、

「今は繁忙期なんで、年が明ければもうちょっと落ち着くと思います」

 という事だった。
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