今でもおまえが怖いんだ
ep.09 樋口梓紗
いつまでこうしているつもり? って、それは抱擁に対しての問いではなかった。

この関係っていつまで続くんですか? って意味で言ったつもり。

だけれど私のお尻と髪に手を回した彼は、セブンスターを咥えたままこちらを軽く見下ろして、「ずっと」とぶっきらぼうに短く言った。


彼の胸に抱かれて迎えた朝は、いつもよりずっと白々しくて他人行儀に思えてしまった。

散々通い慣れた部屋なのになと思いながら、枕元を手で探る。
指先に当たったスマホを拾い上げて時間を見ると、まだ7時にもなっていなかった。

寝たばこはご遠慮くださいというプレートが枕元に置いてあるにも関わらず、テーブルの上に置かれていた灰皿は枕元へと移動していて、そこにセブンスターの吸い殻が置かれている。
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