今でもおまえが怖いんだ
冗談でもなくて本当に、以前会ったことのある直樹君は綺麗な人だった。
顔立ちが整っているだとかそんな訳ではなくて、とても「ちゃんとした」人だった。
今頃私のアパートで怒り狂って暴れまくっているであろうあの人とは違って。
ちゃんと毎朝髭を剃って髪を梳かして、柔軟剤の香る皺のないシャツを着ているような、前髪が割れていることなんてあり得ないくらい隙のない、とてもちゃんとした人だった。
「あのね、人間いつだって完璧な訳ではないんだし。少なくとも俺は透子ちゃんのオシャレで綺麗な時も知っているんだから今日たまたまスッピンだからって気にならないよ。普段は朝1時間以上かけて支度をしているんだって知っているんだから」
でもさでもさ、と私はつい続けてしまう。
「私、ここのところちゃんとしていない日の方がずっと多かったんだ。完璧に寝ぐせのすべてをやっつけて外へ出ることなんてもうなくなっちゃったんだよ」
見る影もなくズボラなの、とわざわざ予防線を張って自分を下げていたら、「そんな風に言わないでよ」なんて優しい言葉をかけられてしまう。
顔立ちが整っているだとかそんな訳ではなくて、とても「ちゃんとした」人だった。
今頃私のアパートで怒り狂って暴れまくっているであろうあの人とは違って。
ちゃんと毎朝髭を剃って髪を梳かして、柔軟剤の香る皺のないシャツを着ているような、前髪が割れていることなんてあり得ないくらい隙のない、とてもちゃんとした人だった。
「あのね、人間いつだって完璧な訳ではないんだし。少なくとも俺は透子ちゃんのオシャレで綺麗な時も知っているんだから今日たまたまスッピンだからって気にならないよ。普段は朝1時間以上かけて支度をしているんだって知っているんだから」
でもさでもさ、と私はつい続けてしまう。
「私、ここのところちゃんとしていない日の方がずっと多かったんだ。完璧に寝ぐせのすべてをやっつけて外へ出ることなんてもうなくなっちゃったんだよ」
見る影もなくズボラなの、とわざわざ予防線を張って自分を下げていたら、「そんな風に言わないでよ」なんて優しい言葉をかけられてしまう。