明日キミに聴かせたい
伏本先輩は駐輪場に自転車を置き、鍵を抜いた後、建物を指差して自動ドアへと向かった。

先輩の後ろを追いかけるように私は後に続いて自動ドアを通った。


「あの…先輩…」

「んー?」


エレベーターの前で立ち止まると、ボタンを押しながら先輩は私の問いに答えた。

「こ、ここどこですか?」

「俺んち」

「へ?え?」


チーン!とエレベーターがやって来ると、先輩はささっと乗り込み、私も後に続いた。

先輩ってお金持ちの子なのかな?
こ、こんな立派な高層マンションに住んでるなんて絶対お坊っちゃまじゃないの?!

うわ、どうしよう…お母様とかにいきなりお会いするとかまだ私なんの準備も出来てないんですけど!?

あ、やばい!!お土産何も持ってきてない!!
失礼な子とか思われちゃうよね?
親の顔が見てみたいわ!とか言われちゃうんじゃない私…と両手を見つめながら悩み始め、エレベーターがチーンと階に止まって扉が開いた時、出て行く先輩の背中に向かって私は「帰ります」と告げた。


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