明日キミに聴かせたい

そう、春音さんも自分が弱いことを謝り、つよくなれなかったことを謝り、頑張れなかったことを綴っていたのだから、私や高志さんや春音さんだけじゃない。

この世界には、弱い人が沢山いる。
見えるだけじゃわからない中身がある。
横断歩道ですれ違うあの人も、コンビニで何かを買ってるあの人も、学校でヤンチャばかりするあいつも、みんなと笑いながら放課後を楽しむあの子も、ポストに投函してるあの人も、自転車に乗るあの子も、少し怖そうなあの人も、みんなみんなわからないまますれ違っていく。


明るいから、いつも前向きな事ばかり言うから、悩みがなさそうだから、優しいから、なんでも出来て頼りになるから、何をしても完璧にこなすから、失敗しないから、誰とでも仲良くなれるから、諦めないから、怖がらないから、泣かないから……


そうやって決めつけられて、だからみんな誰にも言えなくなって言わなくなって、心がパンパンになって苦しくなって、そんなこともいつの間にか自分のせいだって自分を責めて責めて疲れていく。


「♪~弱さは…これから強さを手に入れるための…物だって…必要な物だって……」

「羽流ちゃん…」


私の背中に回された高志さんの手が私の背中をポンポンと触れて耳元で聞こえた「ありがとう…」に私が顔を上げた時、ドアがガチャッと開いた。

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