明日キミに聴かせたい

1限目が終了したチャイムが校内に鳴り響いた時、寝転がっていたはずの男子生徒は一度座って立ち上がると、顔を伏せたまま階段に座っている私にゆっくり近づくと、自分が顔を隠していた週刊誌を私の頭にポンと置いた。


「大丈夫?」


そう聞かれて黙ったまま頷くと、男子生徒は「良かった」とだけ言って階段を下りて行った。


その足元にはなかったはずの上靴が履かれていて、私はその上靴の色から2年生だと知った。


あ、、と声をかけようとしたけれど、きっと真っ赤な目をしている。腫れてるかもしれないという恥ずかしさから躊躇い、結局遠くなっていく足音を耳にしていることしか出来なかった。


「あーあ…」


名前ぐらい聞けば良かった。なんて今更だと思いながら頭の上に開いたまま置かれた週刊誌を手にした時、開かれたページに思わず笑みがこぼれた。

< 35 / 250 >

この作品をシェア

pagetop