リングサイドブルー
子育てを始めたばかりのころは、ひたすらすべてが修行だったが、生活にかかわるひとつひとつに余裕が出てくると、心暖の成長が自分にとっての喜びにもなってくる。三年前には知らなかった感情だ。

(俺も成長したよなあ、そういう面では)

 思い返して感慨深くなっていると、私立小の黒いランドセルを背負った女の子と母親が歩道をすれ違った。心暖の視線が一瞬母子に向いた。

それからすぐに千晃の方へ向いた。ほんのわずかな間があって、それから心暖は笑顔を作った。

「どうした、心暖」
「なんでもないよー」

 千晃の手をぎゅっと握って、心暖は足を速めた。

「なに、さっきのおねえちゃんが着てた制服が可愛かった?」
「んー」

「あの学校、うちから近いし心暖も私立かなあ」
「んー」

 なにやら言葉を捜しているようだ。心暖の視線が斜め上を向いている。
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