リングサイドブルー
千晃がぼやくと、心暖は「食べられるもん」と俯いた。こういうとき、ねだったりもせずにただ悲しそうな顔をされると、千晃はついだめだと言えなくなってしまう。
「じゃあ、半分こしようか」
千晃は心暖の手を引いて、洋菓子店に入っていった。
ガラスケースの中には上品なサイズのケーキや、チョコレートが並んでいる。心暖にとってはそれらがちょうど目線の高さにくるから、完全に釘付けだ。
(一切れ六百円近くって、考えてみればいい値段だよな)
今日の夕飯一食分と比較してケーキのほうが高いのだから贅沢品に違いないのだが、学生時代に費やした煙草や酒代に比べれば安いものだ。鞄から財布を取って、千晃はロールケーキをひとつ注文した。
買い物を済ませてから、心暖は終始ごきげんだった。ケーキを買ってもらえたことがよほど嬉しかったのか、つないだ手を振り回してみたり、ときどき飛び跳ねたりと、喜びを全身で表現している。
そんな姿を見ていると千晃の感じている仕事の不満やら、将来の不安やらはすっとどこかへ消えてやさしい気持ちになれる。
「じゃあ、半分こしようか」
千晃は心暖の手を引いて、洋菓子店に入っていった。
ガラスケースの中には上品なサイズのケーキや、チョコレートが並んでいる。心暖にとってはそれらがちょうど目線の高さにくるから、完全に釘付けだ。
(一切れ六百円近くって、考えてみればいい値段だよな)
今日の夕飯一食分と比較してケーキのほうが高いのだから贅沢品に違いないのだが、学生時代に費やした煙草や酒代に比べれば安いものだ。鞄から財布を取って、千晃はロールケーキをひとつ注文した。
買い物を済ませてから、心暖は終始ごきげんだった。ケーキを買ってもらえたことがよほど嬉しかったのか、つないだ手を振り回してみたり、ときどき飛び跳ねたりと、喜びを全身で表現している。
そんな姿を見ていると千晃の感じている仕事の不満やら、将来の不安やらはすっとどこかへ消えてやさしい気持ちになれる。