リングサイドブルー
今日の電話はやけに長かった。いつもは用件もそこそこに、のんきに釣果情報の交換などをしているのだが、塚原はマイク部分を手のひらで覆うようにしてぼそぼそと話をしている。

 内容が聞き取れなくても、その様子を見ていると千晃にも大体のことが分かった。親会社の会議で決まったあれこれの情報共有、といったところだろう。

 運用班に取引の決定権があるわけではないが、情報を欲しがる理由はこうだ。有益な情報を持っていると、運用班の社内での発言力が上がり立場を保てるようになる。

そんな事情もあって、塚原は親会社のシステム課長である橋爪に取り入ろうと、休日を使って釣り接待もしていたようだ。

それでも、橋爪自体にそれほどの権力がないのか、仕事は減る一方だ。最近は見切りをつけ、付き合いも電話口だけのようだったが、義理堅いのか、ときどき橋爪は社内情報を提供してくる。
< 13 / 102 >

この作品をシェア

pagetop