リングサイドブルー
「若いのにやる気ねえよなあ、森住は」

「金そこそこもらえてますもん。残業してそれ以上稼ぐより、ここにいてさっさと帰りたいのは普通でしょう」
 千晃はうそぶいた。そうじゃなければここにいられない。

 自分のこんな状況を誰かに分かってもらおうとも思わなかった。小さな子供を抱えながらひとりで仕事をしているのだって、自分の行動が招いたことなのだ。

周りに父子家庭に対する理解を求めて気を遣わせ、引け目を感じながら仕事をさせてもらうよりはここにいたほうがマシだ。

 内線が鳴り、千晃は受話器を取った。

「はい、運用班森住です」
「ああ、俺だけど」塚原の声だった。

「ちょうどよかった、これからすぐにミーティングルーム出てきてくれる? 部長から話があるんだってよ」
「わかりました」

 もう異動の打診か? 千晃は内心動揺しながら席を立った。ジャケットを羽織ってネームを首から提げ、階段を上った。
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