リングサイドブルー
これまで一手に負ってきた業務システム開発の仕事を奪われてしまったことは損失だ。けれども、業務委託は開発のみだから、保守運用に関しては仕事を獲れる可能性がある。

その布石として社員を開発メンバーの中に一人潜り込ませることを、提案しようという魂胆のようだ。

グループ会社としての付き合いを考えれば、こちらの目論見を分かっていようとも、断ることはできない提案のはずだ。

 A5サイズの巨大な手帳の隙間から、さきほどの塚原のメモが出てきた。一社に赤でしるしが付けられている。

フリークスタンダード、候補の中では唯一のベンチャー企業だ。まだ見積もりすら入れていないというのに内々定しているらしい。

 業界内で評価の高い企業で、千晃は就職活動時にこの会社の面接を受けている。すでに子供がいるという状況をとりわけ問題視するでもなく、手ごたえはあったのだが結果は不採用。

仕事を始めてみてからは、これでよかったのだと納得はしていたが、心は揺れた。今の会社では異動しない限りゼロから開発に携われる機会はない。

しかし、出向ならば期間限定かつ、憧れの企業から学ばせてもらえる。
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