リングサイドブルー
「出向でも、うちの就業規則が適用になるから。定時で上がれるように口添えもしておくし。もし無理なら、開発班の笹本に声をかけるつもりだけど、どう」

「いつ頃からになりそうですか」
 千晃は考えるよりも先に訊いていた。

「決まれば即じゃないかな。気の短いところものある人だから、新井部長は。これから電話を入れて交渉してみるつもりだよ。……じゃあいいかな、そういうことで」

 もともと考えていたのとまったく違う方向に答えを出してしまったのは何故だ? まだ、捨て切れていない夢があるとでもいうのだろうか。結局数ヶ月間の出向を終えれば、元通りになってしまうというのに。

 ミーティングルームを出て、千晃はこれからのことを考えた。そもそも、開発現場に定時上がりという言葉など存在するのだろうか。

保育園に迎えに行くまでも、今よりも時間がかかる。それこそ時間きっかりで上がっても、間に合うかどうかというところだ。実家の母親を頼らなくてはいけないかもしれない。
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