リングサイドブルー
(なんだ、この会社。普通に土日仕事してやがるのか?)
 しかし、ブラック企業と決め付けるには、社員たちの表情は明るい。

「すみません」
 すぐ近くで女性の声がして、千晃は振り返った。紺色のパンツスーツに身を包んだ女性が、こちらに向かって小走りで駆けてきた。

首からはネームプレートが下がったままになっている。首藤友香、どうやら親会社の人事部の人間のようだ。

「ちょっと訊いてもいいですか?」

下見をしにきたことに気付かれてしまったかと思い、挨拶をしようとしたところで「それって、どこのワンピースですか?」とまるで見当違いな質問が飛んできた。

その視線は、マスタードカラーに、オフホワイトの大きな水玉が様の入ったワンピースにある。先月、心暖の誕生日に買ったものだ。

「ええと、……パドルっていうとこの服ですね」
「やっぱりそうなんですね」首藤は胸の前で手のひらを合わせた。
< 27 / 102 >

この作品をシェア

pagetop