リングサイドブルー
「あの、森住さん。余計なお世話かもしれないけど、あんまり溜め込まないでくださいね」
「はあ?」

「新しい環境で仕事をしている間にも、いい父親でいて、いい夫でいてって、なりたい自分でい続けるのってすごく疲れると思うから。

たとえば私は張り切り屋だから、自分でも知らないうちに全部がんばらなきゃ、ってなって、勝手に追い込まれちゃったりするんだけど。

そういうときに職場のみんなに思ってることを吐き出すだけで随分楽になってるし。だから、森住さんも無理しないでくださいね。昼休みだったら私、だいたい休憩室にいるので」

 これは、昼食の誘いだろうか。そういえば昨日、一歳になる娘がいると言っていた。これまでと同じように働くことのできない葛藤を、強く感じているのかもしれない。

能力がどんなに高かろうが、時間の縛りで絶対的にできないことはあるはずだ。

(俺の場合は、両方とも頑張ろうとは思ってないけど)
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