リングサイドブルー
心の中でそう呟いたが、それが本心ならば出向などしていないはずだということもわかっている。矛盾を素直に認め、千晃は苦笑した。

「はい、是非」
 千晃は首藤にあらためて礼を言って別れてから、ほかの開発メンバーの到着を待つことになった。

(しかし恋愛感情がなかったとしても、女から誘われるのも久々だな)

 相手が既婚で子持ちでも、美人の女性から声をかけられれば悪い気はしない。学生時代は相手を探すには困らない程度にはモテたものだが、子供ができてから一転、面白いくらいに敬遠される存在になった。

それなりの人生経験を積んでいると思われる年齢ならば、人は事情を推し量ろうとするだろう。けれども、そうじゃない。

 手に入れるものがあれば、失うものもある。それがプラスマイナス両方の意味での自己責任ということはわかっているのだが、恋愛からの足抜けが早かった分、同世代の色恋沙汰を聞かされるたびに疎外感を感じるのも確かだった。
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