リングサイドブルー
「心暖が叩いちゃったみたいなのよ」
「え」

「喧嘩したらしいの。心暖ちゃんの家はどうしてママがお迎えに来ないのって訊かれたみたいで。子供だしもちろん、深く考えての言葉じゃないんだろうし、心暖自身もそういうのはまだよく分かってないでしょう?

でも、すごく怒ったんだって。もしかしたら心暖は家族のことを否定されたような気持ちになってしまったのかもしれないけど」

「それで、どこ叩いたの。拓斗くんの怪我は?」
「肩のあたり。そのときは赤くなってたみたいだけど、あざにもなってないみたいだし、怪我は大丈夫そうなんだけど」

「……そう」
 千晃は浅く息を吐き出して、瞼に手のひらを当てた。

「ちょっとそこで待ってて。すぐ行くから」

 電話を一方的に切り、千晃は給湯室を出た。自席に戻ると椅子にかけることもなく、作りかけのプログラムを保存する。ジャケットを羽織ると、

「帰るの?」物言いたげな優月の目がこちらに向いた。
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