リングサイドブルー
「うわあ、すごいなあ。森住さんの奥さん。だめだ、私完全に負けてる」

 それでも首藤は感嘆の声を上げた。向かいを覗けば、冷凍食品出身であろう勾玉フォルムの海老カツが、小ぶりな弁当箱の半分を占拠している。

「俺、だめなんですよ。冷凍食品とかパック惣菜とか」
「え? なんでですか」

「コスパ的に納得いかないというか。金額なりの価値があれば買ってもいいんですけど」
「でも、楽じゃないですか。最近自然解凍でそのまま食べられるものも多いし」

「まあそうだけど。もしかしたら、俺の母親がそういうもの買ってこない人だったから、なんとなく習慣がないのかもしれないですね」

「へえ、じゃあ……」
 架空の妻に想像をめぐらせているのか、首藤の目がもう一度弁当箱に落ちる。

「ああ、それを誰かに求めたりはしてないっすよ。この弁当作ったのも俺だし。作ったというか、朝食とか夕食の準備するついでにやってるだけですけど」

 そこまで言うと、首藤はなんとなく家庭の状況にピンときたようだった。
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