リングサイドブルー
「うち、父子家庭なんですよ。いろいろあって」
 相手に訊かれるよりも先に千晃から言った。

 仕事で直接かかわるわけでもなく、保育園のように子供に対しての印象のために、といったような気遣いをしないで話せる、ちょうどいい距離感だったからか、普段めったに口にしないその言葉を、ためらわずに口に出せるのかもしれない。

「そうだったんですね」
 首藤はそれ以上何も訊かずに、神妙な顔つきで頷いた。

 それから千晃は、通勤ルートが変わって保育園に自分が迎えにいけなくなってしまったこと、子供同士のいさかいの話、今朝その謝罪を保育園でしてきたが、一度は仲良くなったはずの子供たちがぎくしゃくしてしまっていることを立て続けに話した。

「定時上がりしてもいいっていわれても、毎日は無理っすよね。そのうち要件がごちゃごちゃしてきたら、ますます帰れなくなりそうで」
 千晃の口からため息が漏れる。
< 61 / 102 >

この作品をシェア

pagetop