リングサイドブルー
保育園に行きたくないのか、顔をくしゃくしゃにし、瞳には涙を滲ませている。諭されても何度も首を横にふり、頑なに拒絶をしているのは拓斗だ。

心暖は足を止めた。拓斗が中に入るまでここでやり過ごすのかと思えば、千晃の手を離してひとりで保育園に向かって駆けていく。

「たくとくん、いっしょにいこ」

 心暖は自分から拓斗の空いた手を引いた。拓斗は顔を上げ、驚いたように口をあけて、ただ心暖を見つめていた。

もしかしたら心暖は、昨晩の話を自分のことに重ねて聞いていたのだろうか。いやまさか、そこまで理解が及ぶはずがない。

まだ三歳だ。喧嘩、仲直りができなかった、などのキーワードを拾って、心暖なりに解釈したということだろうか。

 千晃がようすを窺っていると、拓斗の母親が会釈してきた。その場で挨拶を返し、大人二人は子どもたちにこの先を委ねてみる。
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